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イージス艦事故:「あたご」に回避義務

レーダー役立たず

千葉県南房総市沖で海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」が衝突した事故で、清徳丸を右舷側に見て航行していたあたごに海上衝突予防法に基づく回避義務があったことが分かった。乗組員による目視が不十分だったため清徳丸に気付くのが遅れ、回避動作が間に合わなかった可能性が高い。海上保安庁と海上自衛隊は行方不明の清徳丸船主、吉清治夫さんと長男哲大さんの捜索を続けると共に、横須賀海上保安部が業務上過失往来危険容疑で艦内を家宅捜索、舩渡健艦長らから事情を聴いている。

石破茂防衛相の自民党部会での説明によると、あたごは19日午前4時5分ごろ、南房総市沖を北に向かって航行中、漁船1隻が右前方から進路を横切った。そのころ、見張りの乗組員が右方向に緑の灯火を視認した。実際は清徳丸の灯火だったが、この時点では漁船の灯火かどうか分からなかったという。

同6分ごろ、緑の灯火がスピードを上げて動いたため漁船と確認。全力の後進をかけて回避動作をした。清徳丸は前方約100メートルで大きく面舵(おもかじ)(右舵)を切った。同7分に衝突。レーダーに清徳丸が映っていたか、それを乗組員が認識していたかどうかは不明という。

海上衝突予防法では、清徳丸の場合、左舷に赤、右舷に緑、後部に白の灯火が義務づけられている。あたごから見て清徳丸は右から左に航行していたとみられ、この場合は赤の灯火が見えることになり、乗組員の証言とは矛盾する。漁労中はこれとは別に緑の灯火をつけることになっており、横須賀海保などは灯火状況についても詳しく調べている。

同法によると、2隻の船が進路を横切る場合、右舷側に他の船を見る船に避ける義務がある。やむを得ない場合を除き、相手の船首方向を横切ってはならない。衝突を回避するには、停止、後進、面舵などの方法があり、あたごは全力後進をかけたが間に合わなかった。横須賀海保などは、回避動作が後進だけで十分だったかについても調べる。

事故当時、あたごは当直態勢で夜間航行をしており、艦橋に10人程度の乗組員が目視20080220k0000m040154000p_size5などで洋上を監視。さらに、前方の船舶を映す水上レーダーでチェックしていた。海自幹部によると、レーダーは近くなると役に立たず、300~400メートルからは乗組員による目視が頼りになるという。衝突が回避できなかったのは、目視が不十分だった可能性がある。

一方、海保と海自は24時間態勢で、護衛艦、ヘリコプターなどを出動させ、吉清さんらの捜索を続けている。現場近くで吉清さんのジャンパーが見つかっている。分断された清徳丸の船体は、千葉県館山市沖にえい航されている。

衝突原因「人為的ミス」

衝突の原因として、イージス艦「あたご」側の目視が不十分だった「人為的ミス」の可能性を指摘する声が強まっている。

88年の海上自衛隊潜水艦「なだしお」衝突事故で、沈没した大型遊漁船「第1富士丸」側の代理人を務めた田川俊一弁護士は、「航行優先権は清徳丸にあり、事故の主原因は漁船に気付くのが遅れたイージス艦側と考えられる」と話す。

そのうえで「小型船はレーダーや目視で確認しにくいが、現場は港に近く多くの漁船がいると予測できる。通常より厳重な宿直体制を敷くべきだった」と批判。「海自側の衝突回避が不十分だった点で、なだしお事故と同じ。教訓が生かされていない」と憤った。

また、神戸大大学院海事科学研究科の臼井英夫准教授(海上交通工学)も「衝突2分前、清徳丸に点灯していた緑の光を確認したと防衛省側は主張しているが、なぜイージス艦側がこんなに近づくまで気づかなかったのか。もっと周囲の見張りをしっかりすべきだった。漁船を確認後、後進をかけるのではなく、右にかじを切っていれば、船体が二つに割れるような事態は避けられたかもしれない」と話している。

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